令和元年8月 第3号
事業分析の手法② ~PEST分析とファイブフォース分析~
FAS部門 平河 貴志
事業分析の手法をテーマにした第2回目としてPEST分析、ファイブフォース分析についてご紹介いたします。こちらの分析手法は外部環境を分析する手法であり、前回ご紹介したSWOT分析の外部環境を把握するためにも用いることができます。
●PEST分析
PEST分析は外部環境をマクロ的に分析する際に用いるフレームワークです。PESTはPolitics(政治的要因)、Economy(経済的要因)、Society(社会的要因)、Technology(技術的要因)の4つの要因からビジネス環境への影響を考えることにより、環境変化に応じた戦略を検討することができます。
政治的要因は法規制、税制、政権交代、国際的な政治動向などからの影響を考えます。
経済的要因は経済状況、景気動向、為替、物価、金融政策などからの影響を考えます。
社会的要因は、人口動向、国民のライフスタイルの変化などからの影響を考えます。
技術的要因は、産業の発達、イノベーション、特許などからの影響を考えます。
●ファイブフォース分析
ファイブフォース分析は、外部環境をミクロ的に分析する際に用いるフレームワークです。
業界内での企業の取り巻く環境を①新規参入者の脅威、②売り手(供給業者)の交渉力、③買い手(顧客)の交渉力、④代替品の脅威、⑤既存企業とのポジショニング争いの5つの競争要因に分け、企業が属する業界構造を分析する手法です。
5つの競争要因を把握することにより、自社の業界内での立ち位置を把握することができます。
①新規参入者の脅威
自社の属する業界に新規企業が参入してくると、業界内の市場シェアを奪われる脅威があります。
②売り手(供給業者)の交渉力
交渉力が強い供給業者は、他社よりも高価格で販売でき、サービスの質を制限することができます。供給業者が強い交渉力を持つと、不利な取引条件となる脅威があります。
③買い手(顧客)の交渉力
有力な顧客は業界内の企業に対して、企業を競わせることにより値下げや、品質・サービスの向上を求めます。顧客の交渉力が強い場合、値下げ圧力をかけられ、収益性が低くなる脅威があります。
④代替品の脅威
代替品は、大きな技術変化や消費者のニーズの変化によって、これまでにない新製品として登場し、既存の製品に取って代わる脅威があります。
⑤既存企業のポジショニング争い
業界内の既存企業同士は、競合企業であるため価格競争やサービスの拡充
などにより、市場において優位な地位を確保しようとします。競合企業との敵対が脅威となります。
<執筆者紹介>
地方銀行での法人・個人に対する融資業務を経て髙野総合会計事務所に入所。
現在は中小企業の事業再生業務やM&Aなどのデューデリジェンス業務に従事しています。