役員報酬の改定について
公認会計士 吉良
今回は、役員報酬の改定について解説します。「役員賞与に関する会計基準」に続き会社法の制定により、役員に対する報酬は賞与も含めて職務執行の対価とされ、役員賞与は利益処分ではなく報酬と同様の支給手続きによることとされました。その一方で法人税法上は「定期同額給与」「事前確定届出給与」「利益連動給与」の概念が平成18年度税制改正に創設され、該当するもの以外は損金不算入となり、さらに平成19年度税制改正では一部見直しが行われています。このため役員報酬の改定にあたっては税金コストに直結する可能性があり、より慎重に行うことが必要になっています。
1.会社法における役員報酬の改定手続き
役員報酬の決定にあたってはお手盛りによる弊害を防止するため、定款記載または株主総会決議が必要です(会社法361条)。定款記載は通常行わないため、単年度ごとに株主総会で支給額を決定する方法のほか、株主総会で支給限度額を決定し取締役会決議(監査役の場合は監査役の協議)で支給額を決定する方法(総額枠方式)が実務では採られます。総額枠方式の場合、役員報酬の改定が総額枠の範囲内であっても取締役会決議が必要となります。
会社法では、支給額が確定していない場合に株主総会でその算定方法を決議することで足りるとともに、金銭でないものはその具体的な内容を決議することとなります。
2.法人税法における役員報酬改定の損金算入要件
国税庁から公表されている「役員給与に関するQ&A」「役員給与に関する質疑応答事例」のほか改正法人税法施行令、同施行規則によると、役員報酬(法人税法上は賞与も含めて役員給与と規定)改定の際の主な留意点は以下の通りです。
① 定期同額給与について、(ア)会計期間開始の日から3月を経過する日までに行う改定 や(イ)役員 の職制上の地位の変更などやむを得ない事情による臨時改定 (ウ)経営状況の著しい悪化にともなう 減額改定 や(エ)行政処分を受けたこと等による社会的責任にともなう一時的減額 は、損金算入が 認められる
②定期給与の増額改定を株主総会で行うに際し、期首に遡及して増額し一括支給する場合、既に終了した 職務に対して事後に増額したものは損金不算入となる。
③定期同額給与の増額改定を期中の臨時株主総会で行う場合、上記①を除き、増額改定は上乗せ支給され た部分が損金不算入となり、減額改定は減額改定前の額のうち減額改定後の定期給与の額を超える部分 が損金不算入となる。
④事前確定届出給与についても、上記①の(イ)(ウ)による改定は損金算入が認められる。
⑤ 平成19年度税制改正により、事前確定届出給与の届出期限は改定を行った株主総会等の日から1月経過 日または会計期間4月経過日に緩和された。届出書には、(ア)役員の氏名、支給時期、支給金額等 (イ)改定事由のほか、(ウ)同族会社においては事前確定届出給与以外の給与に関する事項 の記載が 必要となる。
⑥事前確定届出給与について、届出た額を超える支給は全額、届出た額を下回る支給は実際の支給額が損 金不算入となる。