出向先法人が支出する給与負担金に係る役員給与の取扱い
税理士 村野
平成18年度税制改正で役員給与に関する取扱いが全面的に改められましたが、他社からの出向者が自社の役員になっている場合に、その他社に支払ういわゆる出向負担金を、自社の役員給与として取り扱ってよいものかどうかについては、明確な指針がありませんでした。平成19年3月22日に公表された法人税基本通達の一部改正で、この出向負担金を自社の役員給与として取り扱うための要件が明らかになりましたので、今回はこの点についてお伝えします。
1.給与負担金を役員給与として損金に算入するための要件
出向者が出向先法人において役員となっている場合において、出向先法人が支出する当該役員に係る給与負担金の支出を、出向先法人における当該役員に対する給与の支給として取り扱うためには、次のいずれにも該当する必要があります。
(1)当該役員に係る給与負担金の額につき、当該役員に対する給与として、出向先法人の株主総会、社員総会又はこれらに準ずるものの決議がされていること。
(2)出向契約等において、当該出向者に係る出向期間及び給与負担金の額があらかじめ定められていること。
上記に該当する給与負担金については、さらに、①定期同額給与 ②事前確定届出給与 ③利益連動給与のいずれかの要件を満たせば、損金に算入することができます。なお、②の場合には、出向先法人が所轄税務署長に事前確定届出給与に関する届出書を提出することになります。
2.経過措置
平成18年度税制改正は平成18年4月1日以後開始事業年度から適用されていますが、この給与負担金に係る役員給与の取扱いについては、一定の経過措置が設けられています。経過措置の期間は、平成18年4月1日から平成19年3月31日までに開始する事業年度及びその事業年度終了の日の翌日から同日以後に行われる役員給与の改定までの期間(事業年度開始の日から3月以内の期間に限ります)となります。経過措置の内容は、次の通りです。
(a)上記(1)の株主総会等の決議要件を満たさない場合においても、(2)の出向契約等の要件を満たしていれば、役員給与として取り扱われます。
(b)上記(1)及び(2)の要件を満たさない場合においても、旧法人税基本通達9-2-34で‘報酬’とされるものについては、定期同額給与に該当する役員給与とされます。旧通達の内容は割愛しますが、従前役員報酬として損金算入が認められていた出向負担金については、損金算入が認められることになります。
3月決算法人については、経過措置の期間終了が近づいておりますので、念のためご留意下さい。