温暖化問題で関心高まる排出権取引
公認会計士 阿部
排出権取引とは?
今日では、地球温暖化問題はわが国だけでなく世界各国にとって対処すべき重要なテーマとなっています。この温暖化問題に関連する会計上のトピックとして、排出権取引についても注目が高まっています。
この排出権取引とは、京都議定書に定められた先進国の温室効果ガスの排出量を削減するために考えられた取引方法で、国、自治体および企業などに排出する権利を割り振り、この権利を超過して排出する組織体と下回る排出しかしていない組織体との間で、その権利を売買するというものです。わが国でも、京都議定書に基づく国単位での削減目標となる基準が割り振られたことにより、国レベルではすでに取引が行われており、今後、各企業への割り振りと共に、排出権取引も規模の拡大が予想されます。
排出権取引の具体的会計処理
上記のように、排出権には無形固定資産に近い財産性を有していることから、取得した際に資産として計上すると共に、自社の削減量に充てられたときに、これを費用(販売費及び一般管理費)として処理します。なお、取得した際の処理は、取得方法や目的により下記のように異なります。
①他者から排出権を購入する場合
取得した際に、「無形固定資産」または「投資その他の資産」として処理します。取得した排出権は減価償却の実施は不要ですが、減損会計の対象になります。
②第三者への出資を通じて排出権を取得する場合
温室効果ガス削減のプロジェクトを実施している会社等へ出資を行い、その投資の成果の一部として排出権を取得する場合は、当該会社等へ出資した金額は「投資有価証券」等として処理し、その投資の成果の一部として排出権を取得した際に、排出権を「無形固定資産」または「投資その他の資産」として計上します。
③転売目的で取得する場合
今後、排出権取引が拡大した際には、自社での使用目的でなく、第三者への転売を目的として取得する場合も想定されます。この場合、第三者への出資を通じて取得する場合は、上記の②と同様の会計処理を行いますが、他者から購入する場合は、この取引が通常の商品販売と同様の取引とみなして、取得した排出権は棚卸資産として計上します。