棚卸資産会計基準の適用開始
税理士 西澤
平成20年4月1日以降開始事業年度より、「棚卸資産の評価に関する会計基準」の適用が開始されました。主に上場会社や大会社に適用されますが、中小企業会計指針によって中小企業にも適用が望ましいとされています。
ポイント1.会計処理の方法
棚卸資産会計基準において棚卸資産は「通常の販売目的で保有する棚卸資産」及び「トレーディング目的で保有する棚卸資産(当初から加工や販売の努力を行うことなく単に市場価格の変動により利益を得るための棚卸資産)」に区分され、原則として次のとおり処理することとされました。
1.通常の販売目的で保有する棚卸資産(具体的には、商品、製品、半製品、原材料、仕掛品等)は、取得原価をもって貸借対照表価額とし、期末における正味売却価額(=売価−見積追加製造原価及び見積販売直接経費)が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額するものとされています。また、継続適用を条件に、正味売却価額にかえて、再調達原価によることも認められています。
2.トレーディング目的で保有する棚卸資産は、市場価格に基づく額をもって貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額(評価差額)は当期の損益として処理します。
その他、以下の点についても会計処理上留意する必要があります。
・重要な会計方針の変更の記載:従来、採用していた会計方針が原価法、低価法のいずれであっても、会 計基準等の改正に伴う会計方針の記載が必要になります。
・損益計算書の注記:簿価切下額は、注記による方法又は売上原価等の内訳項目として独立掲記すること とされています。ただし、当該金額の重要性が乏しい場合は、区分掲記または注記を省略することができます。
ポイント2.税務上の取扱い
税務面では、平成19年度税制改正において(平成19年4月1日以後開始事業年度から適用)、取得原価と比較すべき時価が、「再調達原価」から「正味売却価額」に変更されました。ただし、一定の条件のもと、平成19年4月1日から平成20年3月31日までの間に開始する事業年度においては、経過措置として「再調達原価」によることも認められています。
ポイント3.会計と税務の調整
棚卸資産の評価方法として、税務上は「原価法」を採用している場合で、平成20年4月1日以後開始事業年度から会計基準に従い帳簿価額の切下げを行った場合、期末時の評価の切下げは認められず取得価額をもって、税務上の帳簿価額とされます。
つまり、会計上と税法上の帳簿価額が一致しないことになり、申告調整が必要となります。この乖離を解消するには、税務上の棚卸資産の評価方法を「原価法」から「低価法」に変更する必要があります。
その場合にも会計上算出した「正味売却価額」が税務上は認められない場合もありますので、担当税理士にご相談下さい。