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TSKニュース&トピックス

平成21年1月号

新制度の「取引相場のない株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度等」について

税理士 伊藤


(1)制度の概要

非上場会社の株式は換金性が乏しいにも拘わらず、高額な相続税評価額となり、現経営者から後継者への自社株式の承継に際して多額の相続税及び贈与税の負担となることがあり、事業承継の大きな弊害になっていました。それに対応するために、これらの猶予制度が創設され、平成21年度税制改正大綱にその内容が盛り込まれました。

①取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度等
「相続税の納税猶予制度等」は、事業承継相続人が、非上場会社を経営していた被相続人から相続等によりその会社の株式等を取得しその会社を経営していく場合には、その事業承継相続人が納付すべき相続税額のうち、相続等により取得した株式等に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予され、一定の要件を満たせば相続税が免除される制度です。

②取引相場のない株式等に係る贈与税の納税猶予制度等
「贈与税の納税猶予制度等」は、後継者が、非上場会社を経営していた現経営者から、贈与によりその保有株式等の全部を取得した場合には、その株式等の贈与に係る贈与税の全額の納税が猶予される制度です。なお、贈与者の死亡時には、引き続き保有する株式等を相続により取得したものとみなし、贈与時の時価により他の相続財産と合算して相続税額を計算し、その際、経済産業大臣の確認を受けた場合には、「相続税の納税猶予制度等」を適用することになります。
 

(2)利用方法及び効果

この2つの制度の利用方法及び効果を考えてみます。例えば、現在の株価はそれほど高くないが、今後毎期利益が発生することが予想され、将来株価の上昇が見込まれる会社があったとします。この会社の場合でこれらの制度を利用する事業承継対策として、まず、「贈与税の納税猶予制度等」を利用して株価が低い段階で、現経営者から後継者へ自社株式の贈与を行う方法が考えられます。贈与時には、この制度によって贈与税が全額猶予されます。また、将来、現経営者が死亡した時には、たとえ自社株式の株価が上昇していても贈与時の低い評価で自社株式に係る相続税を計算することができ、さらに、「相続税の納税猶予制度等」を利用することによって、贈与時の低い評価額に対する20%の相続税のみを納めれば良いことになります。

これらの制度は大綱の段階では、まだ不明点も多くありますが、「相続税及び贈与税の納税猶予等」の併用、又は、相続時精算課税制度とを併用して適用することによって、より効果的な事業承継対策が期待できそうです。