中小企業の会計に関する指針の改正
公認会計士 高木
「中小企業の会計に関する指針」の平成21年改正が行われ、平成21年4月17日に公表されました。今回の主要な改正点の内、企業会計基準第15号「工事契約に関する会計基準」に対応した会計処理の見直し等が行われていますのでご案内します。
1.工事進行基準の適用
旧指針では、長期の請負工事に係る収益認識方法は「73.収益認識(3)その他」において下記のとおり定められていました。
新指針では、主として財務情報の企業間比較可能性、適時把握の観点から下記のように定められています。従来は工事完成基準と工事進行基準の選択適用が認められていましたが、新指針では、下記(1)〜(3)の要件について信頼性をもって見積もることができる場合には工事進行基準を適用することが求められており、工事完成前であってもその進捗に応じた収益計上が必要となっています。なお、建設業と比較して進捗管理が困難と考えられる受注制作のソフトウェアについても適用対象に含まれています。
2.中小企業の対応について
「中小企業の会計に関する指針」は、中小企業が計算書類の作成に当たり、拠ることが望ましい会計処理を示すものであり、必ずしもその適用が強制されているものではありません。
しかし、すでに「工事契約に関する会計基準」が平成21年4月以降開始する事業年度より適用されており(早期適用可)、上述の(1)〜(3)の要件を満たした工事については工事進行基準の適用が強制されています(満たさない場合は工事完成基準を適用)。
従って公認会計士による会計監査を受ける上場企業や会社法上の大会社については工事進行基準適用への実務対応がすでに始まっています。
このため、元請け企業が上場企業等であり、工事進行基準を適用している工事については下請け中小企業においても同程度の進捗管理が求められる可能性があるため留意が必要です。
また中小企業においては、工事完成前の収益計上に伴う納税負担や金融機関に対する信頼性等の影響を考慮して実務上の対応を検討することが必要と考えらます。