平成27年7月 第1号
合同会社のメリット・デメリット
税理士 石井 宏和
「法人」と聞くと多くの方が株式会社を連想されるものと思いますが、「法人」には社団法人・財団法人・相互会社等、株式会社以外にも様々な形態があります。そのなかで、今回は合同会社(日本版LLCとも呼ばれています)のメリット・デメリッットについてご紹介いたします。
1. 合同会社の特徴
合同会社は、「出資者全員が有限責任社員となる」・「組織運営が自由に行える」という特徴を持っています。合同会社は、会社に出資した人が全員社員となります。この場合の社員とは、株式会社でいうところの株主兼任の役員をイメージしてください。合同会社では、倒産等があった場合それぞれが出資した出資額の範囲までその責任を負うことになります。また、出資者が1名の場合でも合同会社の設立は可能です。
合同会社は、「利益や権限の配分を出資金額の比率に関係なく定めることができる」・「取締役会等の機関を設置する必要がなく定款で内部組織を設計できる」等のことから、組織の運営が自由に行えます。なお、合同会社は株式会社と同様に法人税が課税されます。
2. 合同会社のメリット・デメリット
合同会社につき、株式会社と比較した場合のメリット・デメリットとして次のものが挙げられます。
≪メリット≫
①設立の費用が安い
登録免許税6万円で設立が可能です。(株式会社は登録免許税15万円、定款認証費用5万円を要します。)
②機関設計が自由にできる
株式会社とは異なり取締役会等を設置する必要がなく、会社法の範囲内で内部組織を自由に設計できます。
③利益配分が自由にできる
利益の配分を出資割合に関係なく定めることができます。
④決算公告が不要
合同会社には決算公告義務がありません。ただし、貸借対照表・損益決算書等の決算書類の作成は必要です。
≪デメリット≫
①社会的な知名度が低い
合同会社というとまだまだ社会的な知名度が低いので、取引相手から敬遠される・従業員を募集する際に人が集まらないといった事態が考えられます。
②自由な組織運営が社員の対立を生むことも
利益配分を出資割合に関係なく定めることができる等、自由に組織運営を行うことができますが、その利益分配の方法について社員同士で対立が生じる等、自由であるが故の問題が生じることも考えられます。
なお、合同会社は設立後株式会社へ変更することもできます。個人事業から法人成りをする場合や、グループ会社を新しく設立する際等、会社の形態の一つとしてご一考いただいてはどうでしょうか。
Column
平成28年度の税制改正議論が早くも始まっており、ふるさと納税の企業版創設や企業の節税策報告義務等さまざまな報道がなされています。税制改正は各省庁等がまとめた要望を7、8月に財務省に提出し、年末に大綱として閣議決定され、その後国会審議を経て、3月末頃に可決、成立し、4月1日より施行されることが通常の流れとなります。改正報道内容についても重要度に応じ、随時ニュース等でご報告させていただきます。