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TSKニュース&トピックス

平成27年7月 第3号

繰延税金資産の回収可能性の判断について

日本公認会計士協会準会員 中山 玄基

平成27年5月26日、企業会計基準委員会(ASBJ)は、企業会計基準適用指針公開草案第54号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」を公表しました。今回は、この繰延税金資産の回収可能性に係る判断の変更点の概要について解説いたします。

1. 改正の概要

平成27年5月に「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」(以下、本公開草案)が公表され、これまでの繰延税金資産の回収可能性の考え方について改正される見込みです。今回はその解説を致します。本公開草案では、現基準における企業の「分類」に応じて回収可能性を判断するという枠組みを基本的に踏襲するものとしています。すなわち、企業を五つの分類に分け、それぞれの「会社分類」に応じて繰延税金資産の回収可能性を判断する現行の方法を引き継ぎ、当該定めの一部について、必要に応じた見直しを行うという形で本公開草案は作成されています。以下は主な改正の概要になります。

(1)(分類1)から(分類5)のいずれにも該当しない場合の取扱い(本公開草案第16項)

本公開草案では現基準第5項(1)における「会社分類」という考え方を踏襲しており、各企業は(分類1)から(分類5)に区分されます。これらの各分類の要件のいずれも満たさないようなケースには、過去及び当期までの実績、並びに将来の見込みを総合的に勘案し、各分類の要件からの乖離度合いが最も小さいと判断されるものに分類することが提案されています。

(2)(分類2)、(分類3)に係る要件(本公開草案第19項、第22項)

(分類2)及び(分類3)に係る判断として、これまでの「経常的な利益(損益)」に代え、「臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得」を用いることが提案されています。

(3)(分類2)の企業におけるスケジューリング不能な将来減算一時差異に係る取扱い(本公開草案第21項)

これまで、現基準の(分類2)の企業におけるスケジューリング不能な将来減算一時差異については、一律にそれに係る繰延税金資産の回収可能性がないものとして取り扱われていました。本公開草案では、原則としてこれまでの取扱いを踏襲するとした上で、スケジューリング不能な将来減算一時差異が将来のいずれかの時点で回収できることを合理的に説明できる場合には、当該将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性があるものとして取り扱うことが提案されています。

(4) (分類3)の企業における将来の合理的な見積可能期間に係る取扱い(本公開草案第23項、第24項)

現基準では、「おおむね5年」とされていましたが、5年を超える見積可能期間においてスケジューリングされた将来減算一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを合理的に説明できる場合には、当該繰延税金資産に回収可能性があるものとすることが提案されています。実務上は5年を超える期間として何年分を見積るのかが大変になるものと推測されます。

(5)(分類4)の企業が(分類2)又は(分類3)に該当する場合の取扱い(本公開草案第28項、第29項)

現基準では期末において重要な税務上の繰越欠損金が存在していたとしても、欠損の発生要因がリストラなどの非経常的な要因による場合には(分類3)として取り扱うものとされています。本公開草案ではこの取扱いに一部見直しを加える形で、(分類4)の要件を満たす場合において、将来5年超にわたり一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることが合理的に説明できる場合には(分類2)に、将来においておおむね3年から5年程度一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることが合理的に説明できる場合には(分類3)に該当するものとして取り扱う提案がなされています。

2. 適用時期

本公開草案の適用時期は平成28年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとなっています(ただし、早期適用として平成28年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができます)。

(※):詳細は、ASBJ(企業会計基準委員会)のHP(https://www.asb.or.jp)内にある「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)の公表」をご参照下さい。