平成28年2月 第1号
美術品等についての減価償却資産の範囲の拡大
税理士 伊藤 明弘
絵画、彫刻や工芸品などの美術品等が減価償却資産に該当するかどうかの判定基準が30年ぶりに見直されました。この見直しにより減価償却可能な美術品等の範囲が拡大しました。また、見直し初年度に限定されていますが、一部非減価償却資産から減価償却資産への区分変更も可能となります。今回のTSKニュースでは、見直し後の美術品等の減価償却資産の判定基準をご説明します。
〈平成27年1月1日以降の取得〉
平成27年1月1日以降に取得した次の美術品等は、非減価償却資産として取り扱われます。
(1) 古美術品、古文書、出土品、遺物等のように歴史的価値又は希少価値を有し、代替性のないもの。
(2) 時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの以外で、取得価額が1点100万円以上であるもの。
〈平成26年12月31日以前の取得〉
(1) 平成26年12月31日以前取得資産の区分変更
平成26年12月31日以前に取得し、非減価償却資産として取り扱っていた美術品等であっても、平成27年1月1日以降最初に開始する事業年度(以下、「適用年度」)に再判定を行い、再判定の結果、減価償却資産に該当することとなった場合には適用年度以降、減価償却費の計上が可能となります。なお、再判定による区分変更ができるのは適用年度だけですので注意が必要です。
(2) 区分変更の要件
次の①~③の要件を充足している場合に限り、区分変更が可能となります。
① 平成27年1月1日以降取得した美術品等と同様の判定をした場合に、減価償却資産に該当すること。
② 適用年度において事業供用されていること。
③ 適用年度において減価償却費を計上する等減価償却資産に該当するものとして取り扱うこと。
(3) 償却方法の選択
再判定により区分変更を行った美術品等の償却方法は、取得日に応じた償却方法と平成27年1月1日に取得したとみなした場合の償却方法を選択することが可能です。
Column
平成28年度税制改正では建物附属設備、構築物の減価償却方法が定額法に一本化されます。この改正は平成28年4月1日以後に取得するものが対象となっているため、会社の決算期には関係なく平成28年3月31日迄に取得したものは従来通り定率法により償却計算を行うことができます。平成28年4月1日以後は建物、建物附属設備、構築物につき税務上定額法が強制適用となるため、賃貸物件取得時等の納税シミュレーションには十分注意する必要があります。