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TSKニュース&トピックス

平成29年1月 第3号

民法改正にともなう保証制度変更・事業承継と金融実務

税理士 徳田 貴仁

制定から120年を経た大規模な民法改正法案は、平成29年中の衆参可決成立が見込まれます。また、この改正は、事業承継に重要な影響を与えますので、そのうち、特に保証制度変更を取り上げます。

1.事業性借入を対象とする個人保証・個人根保証のルールが整備されたこと

①事業性借入を対象とする保証の公正証書ルール(改正民法465条の6)

【改正民法】 事業のために負担する借入金を対象とする、個人保証・個人根保証は、保証契約の締結1カ月以内に、公正証書で「保証債務を履行する意思」を確認しなければ、原則として無効とされました。

【実務上の影響】下記の②の経営者以外の知人や友人による第三者保証の場合に、保証契約自体を無効とし、強力に保証人の保護を図る目的があります。「事業のため」の範囲が解釈上問題となり、手続コスト増も見込まれます。

②いわゆる経営者保証の例外(改正民法465条の9)

【改正民法】 主債務者が法人である場合の経営者(取締役、執行役等)・オーナー(議決権過半数保有)や個人事業主である主債務者の共同事業者・事業従事配偶者らの保証については、上記の公正証書なき保証も有効とされます。

【実務上の影響】 例外が問題となり、例えば、引退して、議決権比率を下げ、役職からも外れたが、経営に影響力を有する創業者、後継が確実な役員候補者に関し、原則通り、①の公正証書ルールが適用される可能性が高いといえます。自社及び取引先の事業承継時の保証債務の取扱処理の参考となります。

③金融実務と監督指針との関係

金融庁の金融機関向け監督指針(平成27年4月(※))での、経営者以外の第三者による個人保証の取扱と共通の方向の改正です。監督指針は、経営に関与しない第三者による保証を原則として前提とせず、保証に依存しない融資実務の確立を目指すもので、事業承継の際に、前経営者からの解約申出等がある場合には、一定の要件のもと、適切な対応をすることを求めており、自社及び取引先の事業承継時に、十分な留意が必要となります。  
※参考 金融庁『主要行当向けの総合的な監督指針Ⅲ-10-2(1)』『中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針Ⅱ-11-2(1)』 

2.保証人保護のための情報提供義務が新設されたこと

【改正民法】主債務者が、事業上の債務につき個人保証を委託するとき、保証人になろうとする者に対して、財産及び収支の状況や他の債務や担保の内容等の情報提供義務があり、これを怠るか、事実と異なる情報を提供し、保証契約の締結に至った場合で、これを債権者が知りまたは知りうべきときに、保証人による保証契約取り消しが認められます。(改正民法465条の10)保証契約成立後、委託保証人から請求があった場合、債権者は、主債務者の不履行の有無等につき、情報提供義務があります。(改正民法458条の2)
 

【実務上の影響】債権者側に、主債務者情報の把握と保証人への情報提供に関する義務を課すものであり、実務上、大きな影響があります。自社の場合に当てはめて、御検討下さい。

執筆者紹介

德田 貴仁 マネージャー(税理士)

 事業承継の実務、税務の他、法人・個人の国際税務、M&Aの統括に従事する。国際会計事務所ネットワークHLBインターナショナルコンタクトパートナー。