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TSKニュース&トピックス

平成29年2月 第1号

利益連動給与の拡充【株式交付信託】

公認会計士・税理士 真鍋 朝彦

平成29年度税制改正大綱において役員給与の見直しが行われました。これまで損金算入が可能な役員給与は、主なものとして①定期同額給与 ②事前確定届出給与 ③利益連動給与の3つとされてきました(他にストックオプション・使用人兼務役員の使用人部分等あり)。昨今「コーポレートガバナンスコード」等で株式報酬の重要性が謳われたことにも連動して、特に利益連動給与の拡充が図られています。今回はその中で「株式交付信託」を取り上げます。

【株式交付信託】

Ⅰ【株式による給与】➡業績連動指標を基礎として算定される市場価格のある株式(数で確定)を交付する給与であり、予め確定した「数」を限度とするものとされる。

【株式交付信託】とは…会社法では自社株式の無償発行などが認められていないことから、会社が役員に対して信託を利用して自社株式を交付するものとされます。

Ⅲ【手続きの流れ】

 ①会社が信託銀行に対して株式取得資金を拠出(金銭を信託) ②信託銀行は市場より株式を取得 ③会社は各役員に対して業績目標の達成度合いに応じてポイントを付与 ④信託銀行経由で各役員に対してポイントを付与 

【株式交付信託の種類】ポイントは「各役員に株式を交付するタイミング」(2種類が存在)

 ①「在任時交付型」(在任時に株式を交付) ②「退任時交付型」(退任時に交付)

【平成29年】ポイントは「各役員に株式を交付するタイミング」

 ①「在任時交付型」(在任時に株式を交付)➡平成2941日以後の交付決議分から損金算入可能(これまでは定期同額給与などに該当しておらず、損金不算入扱い。

 ②「退任時交付型」(退任時に株式を交付)➡平成29101日より取り扱いが変更(損金算入自体はこれまでと変化がないが、その要件が変わることに留意

【「在任時交付型」の留意事項】

「在任時交付型」が損金算入するための要件として「有価証券報告書」において以下の開示が必要になります。

  ①業績連動指標…営業利益、経常利益、ROE,ROA,株価、売上高等

  ②交付する株式数の算定方法

  ③交付する株式数の上限数(株式取得資金の上限ではなく「株式数の上限」であることに留意が必要)

Ⅶ【「退任時交付型」の留意事項】

これまで「退任時交付型」は退職給与として損金算入が認められてきましたが、平成29101日以後に交付決議するものからは有価証券報告書において以下の「利益連動給与の損金算入要件」を満たすことが必要

  ①業績連動指標…営業利益、経常利益、ROE,ROA,株価、売上高等

  ②交付する株式数の算定方法

  ③交付する株式数の上限数(株式取得資金の上限ではなく「株式数の上限」であることに留意が必要)

Ⅷ【まとめ】同じ株式交付信託でも種類によって、

 ①交付のタイミングにより種類が2種類あること

 ②損金算入が認められることとなる時期がことなる(在任時交付型は平成29年4月1日。退任時交付型は平成29年10月1日より要件が変更になる。

Column

トランプ米国大統領が1月20日に就任して、TPP離脱など矢継ぎ早に様々な大統領令に署名をしています。大統領令に署名したからといってそれが直ちに施行されるとは限らないそうですが、米国の動きが国際課税や各国の関税などへ影響を及ぼしそれが各国の企業活動に対して様々な影響を及ぼす可能性が高くなりました。今後も当面の間は米国の動向から目が離せない状況になりそうです。