大赤字なのに多額の税金の理由~会計と税務の相違点④~
シニアマネージャー 公認会計士 高木 融
【税効果会計とは】
(数値例) 前提:会計上減損損失2,000を計上、税務上は申告加算、税率30%
上記の例でいうと、税効果会計不適用の場合は、税引前当期純利益3,000に対し法人税等が1,500となっており、表面税率が50%となるため実際の税率30%とかい離した見え方になります。ところが、実際には減損損失2,000は対象となった固定資産を処分等したタイミングで税務上損金算入されることになるため、将来的に課税所得を圧縮する効果を潜在的に有しており、この資産性に着目して税負担の軽減効果を表現するとともに、税引前当期純利益と法人税等を合理的に対応させようとしているのが税効果会計です。
具体的には、税効果会計を適用すると減損損失2,000の税率相当分(30%)である600を法人税等からマイナスする処理として法人税等調整額▲600を計上します。そうすると税負担は900(1500‐600)となり、税引前当期純利益である3,000の税率相当である900と対応する見え方になります。
ただし、この税負担の調整は、将来の節税効果による資産性を拠り所にした費用のマイナス処理であり、将来課税所得が発生しなければ節税効果のメリットが実現しないものです。従って、会計上は会社の将来の課税所得の発生見積もりとの比較等が必要な場合があり、その計上に一定の制限が設けられています。
<執筆者紹介>
髙木 融 シニアマネージャー 公認会計士
大手監査法人で国内監査業務に従事した後、高野総合会計事務所に入所。FAS部門にて企業再生、M&A等のデューデリジェンス業務等に従事。