平成29年6月 第1号
仮装経理の更正の請求について
税務部門 シニア 税理士 山口 大輔
東芝の不正経理に端を発し、様々な企業で同様の問題が多く取り上げられるようになりました。通常不正経理では利益を過大にし、業績が好調であるかのように見せることを目的としていますが、業績を良く見せることにより、結果として法人税等を過大に納付していることになります。不正経理が発覚し、本来の利益に基づく更正の請求をした場合、法人税等は通常の企業が過大納付した場合と同じように還付されるのでしょうか。今回は不正経理を行った場合の更正の請求についてご説明いたします。
1.減額更正が行われる時期
本来、申告書に記載した法人税額等が税法の規定に従っていなかったことにより過大となる場合には、申告期限から5年以内に更正の請求をすることができます。しかし、仮装経理による更正の請求をする場合には、請求後すぐに減額更正が行われる訳ではありません。その仮装経理をした額を、その後の事業年度の確定した決算において、その仮装経理の事実を修正する経理をし、その決算に基づく確定申告書を提出するまでの間は減額更正がされないこととなっております。例えば、「架空売上1億円」を計上していた法人の場合には、当期において「過年度損益修正損1億円」として損失を計上することにより修正経理を行ったこととされ、これに基づく確定申告書を提出することにより、減額更正の手続きが開始されることとなります。
2.法人税に係る仮装経理の更正の請求
法人税については、不正経理発覚により本来の利益に基づいた更正の請求を行い、それが認められた場合においても、その時点で即時法人税の還付を受けることができません。
これは一種のペナルティのような規定となっており、即時還付を認めていない代わりに、仮装経理により過大に納付した税額を翌期以降の税額から5年間に渡って控除をし、5年を超えた時点で控除しきれていない税額については、その時点で還付を受けられることとなっております。 ただし、法人税については特例として、減額更正の日の属する事業年度開始の日前1年以内に開始する事業年度の法人税の額で、その更正の日の前日において確定している金額までは即時還付を受けることができます。 減額更正から還付までの流れは下記図の通りとなっております。
3.地方税に係る仮装経理の更正の請求
地方税については、法人税と同様に更正の請求が認められた場合でも即時還付を受けることができません。仮装経理により過大に納付した税額を翌期以降の税額から5年間に渡って控除をし、5年を超えた時点で控除しきれていない税額については、その時点で還付を受けることが可能となります。
また、地方税については法人税のように前1年以内に開始する事業年度の確定税額までの即時還付の特例はありませんので、還付を受けることができるのは5年経過後となります。
4.消費税に係る仮装経理の更正の請求
消費税については、仮装経理の更正の請求という規定がありません。その為、通常の更正の請求と同様の取扱いとなりますので、更正の請求が認められた場合該当の消費税については即時に還付を受けることが可能となっております。
<執筆者紹介>
税務部門/シニア 税理士 山口 大輔
中小企業及び中小企業の関係会社を中心に決算業務、申告書の作成、税務相談業務に従事。
Column
【広大地評価の改正について】
平成27年の税制改正から平成29年までの税制改正内容を見てみますと資産課税関係については課税強化の方向で進んでおります。平成29年度の税制改正において広大地の評価については平成30年1月1日以後の相続等により取得した土地等の評価から適用されることになりました。現行広大地の評価の要件を充たすと土地の面積によって最大65%の評価減額が適用されます。これが改正されますと面積に比例して減額する現在の評価方法から各土地の個性(面積、形状等)に基づき評価する方法に見直されます。このことにより広大地の評価額は相対的に高くなる可能性があります。そのため本年中にできる対策としては現行法が適用される平成29年に土地等の贈与を検討されたら如何でしょうか。特に三大都市圏に500㎡以上の土地を保有されている方については広大地の評価が適用できるかどうかを専門家に相談し相続税対策として生前に推定相続人に贈与(相続時精算課税の活用)を行うことにより改正後の税負担を抑制する効果を得られるものと思料されます。TSKニュースを愛読されている方で関心のある方は是非、弊事務所にご相談ください。