平成29年6月 第3号
金融機関の貸倒引当金の算定手順
公認会計士 藤田 祐紀
金融庁の方針に「事業性評価」が盛り込まれ、金融機関に対して、財務データや担保・保証に必要以上に依存することのない対応が求められるようになりました。それに伴い金融機関がいかに企業を評価するかが注目されていますが、金融機関にとって企業の評価が重要になる局面の1つに貸倒引当金の算定があります。
そこで、今回は金融機関がどのように貸倒引当金を算定しているのか、金融機関の貸倒引当金の算定手順の概要を説明します。
金融機関の貸倒引当金の算定は下記3つの手順で行われます。
1.信用格付に基づく債務者区分の実施
まず、金融機関は、債務者の財務内容に基づき信用格付を行い、債務者を下記の5つに区分します。
2.保全状況等を加味した債権分類の実施
次に、上記で区分した債務者別の債権について、その資金使途、担保・保証等の保全状況を勘案し、回収の危険性に応じてI分類~Ⅳ分類の4つに分類します。
3.債務者区分および債権分類に基づく償却・引当必要額の算定
最後に、上記で分類した債権について、過去の貸倒実績率や倒産確率等を用いて、必要とされる貸倒償却(債権そのものの減額)、または貸倒引当金の繰入額を算定します。
執筆者紹介
藤田 祐紀 シニアスタッフ 公認会計士
大手監査法人で国内監査業務に従事した後、高野総合会計事務所に入所。中小企業再生支援協議会への出向で、企業再生局面での金融機関の調整現場も経験。現在はFAS部門にて企業再生、M&A等のデューデリジェンス業務等に従事。