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TSKニュース&トピックス

平成29年12月 第3号

デンソー最高裁判決とタックスヘイブン対策税制における事業基準、平成30年税制改正大綱

 シニアマネージャー 税理士 德田 貴仁

タックスヘイブン対策税制の適用除外要件のうち、事業基準の該当性が争われた第1次デンソー事件において、最高裁は、納税者勝訴の判決を下しました(最高裁第三小法廷平成29年10月24日裁判所ウェブサイト、以下、「最判」)。本稿では最判の紹介と実務への影響を図解し、概観します。

(1)事実関係の概要 

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(2)法令、争点、最判の判示、実務への影響 

・法令 

租税負担割合から算出した一定の軽課税国に本店または主たる事務所を有する外国関係会社(特定外国子会社等)について、その発行済株式の一定割合以上を有する等の要件を満たす内国法人は、 原則としてタックスヘイブン対策税制の適用を受け、当該特定子会社等の所得を益金に算入して課税を受けます。例外的に、適用除外基準(事業基準、実体基準、管理支配基準及び所在国基準又は非関連者基準)をすべて満たす場合、同税制の適用は除外されます。事業基準については、株式保有業等の一定の事業を主たる事業とするものではないことが要件となります。

・争点 

A社が株式保有業を主たる事業とするものに該当し、事業基準を満たさないものとなるかどうか、A社の地域統括業務は株式保有業の一部にすぎないか、及びA社が営んでいる複数事業のうち、いずれが主たる事業に該当するのか、が争点となりました。 

・最判の判示

 ①一般論として、地域統括業務が株式保有業に包含されるとする解釈を否定、  ②対象事業年度におけるA社の地域統括業務は、 株式保有業に該当しない(収入金額、所得金額、使用人数、固定施設の状況からの事実認定を踏まえ、「多岐にわたる業務から成ること」「豪亜地域における地域統括会社として生産・相互補完の体制を強化し、効率化やコスト低減を図ることを目的とすること」「個々の業務につき対価を得て行われていたこと」から、株主権の行使や株式の運用に関連する業務とはいえない) ③A社にとり、地域経済圏の存在を踏まえて域内グループ会社の業務合理化、効率化を目的とするもので、当該地域における事業活動の経済合理性がある、として、「A社の主たる事業は、株式保有業に該当しない」として、タックスヘイブン税制の適用を否定しました。

・実務への影響

 平成29年税制改正により、上記「適用除外基準」は、実質上、タックスヘイブン税制の適用対象となるかの「制度発動基準」に位置付けを替えました。したがって、最判が示した、地域統括業務と株式保有業との関係、主たる業務の判定方法は、実務上有効なものとして先例的意義を有するといえます。なお、平成30年度与党税制改正大綱では、①経済活動基準、②会社単位の合算課税制度における適用対象金額、③部分合算課税制度における部分適用対象金額、④外国金融子会社等に係る部分合算課税制度、⑤二重課税調整に関し、あらたな改正案がしめされており、「企業部門の税務上の予見可能性の向上に配慮する」との大綱の表現が、具体的な税制改正に具現化されるかが注目されます。

<執筆者紹介>

德田 貴仁 シニアマネージャー(税理士)

 事業承継の実務、税務の他、法人・個人の国際法務、税務、M&Aの統括に従事する。国際会計事務所ネットワークHLBインターナ ショナルコンタクトパートナー。