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平成29年12月 第2号

国外転出(相続)時課税

TAX部門/個人資産税務所属 税理士  坂本 雄一

国外転出時課税制度は、国外転出をする時点で1億円以上の有価証券等を有している一定の居住者に対して、国外転出の時に、当該有価証券等の含み益に対して所得税が課税される制度です。当該制度は国外転出の時だけでなく、相続の時にも課税される場合がありますので、注意が必要です。

1. 概要

国外転出(相続)時課税は、相続開始の時点で1億円以上の有価証券等を所有している一定の居住者が亡くなり、非居住者である相続人等がその相続又は遺贈により当該有価証券等の全部または一部を取得した場合に、当該有価証券等の譲渡があったものとみなして、その有価証券等の含み益に対して被相続人に所得税が課税される制度です。平成27年7月1日以後の相続又は遺贈について適用されます。

2. 1億円の判定

有価証券等が1億円以上となるかどうかの判定は、非居住者である相続人等が取得した有価証券等の価額のみで判定するのではなく、相続開始の時点で被相続人が有していた有価証券等の価額の合計額で判定します。 また、有価証券等については、被相続人が国内に保有していた有価証券等だけではなく、国外で保有していた有価証券等も含まれます。

3.申告期限

国外転出(相続)時課税の申告をする場合は、相続開始があったことを知った日の翌日から4ヵ月以内に、被相続人のその年の各種所得に国外転出(相続)時課税の適用による所得を含めて被相続人の準確定申告及び納税を行う必要があります。なお、納税の猶予の特例を受ける場合は、準確定申告の申告期限までに納税猶予分の所得税額及び利子税額に相当する担保を提供するなどの一定の手続きをする必要があります。

4.未分割の場合

相続財産が未分割の場合、民法の規定により、その相続財産は法定相続人の共有として取り扱われますので、その法定相続分に応じて、財産の移転があったものとみなされます。したがって、準確定申告の期限までに遺産分割が確定しない場合には、法定相続分で相続人に有価証券等が移転したものと取り扱われますので、被相続人の国外転出(相続)時課税の適用による所得の金額を計算し、準確定申告を行う必要があります。なお、その後の遺産分割確定により、非居住者である相続人の有価証券等の取得額が法定相続分でない場合には、税額が増額する場合には修正申告、税額が減少する場合には、更正の請求を行うこととなります。

5.まとめ

グローバル化が進んだ近年では、海外赴任や国際結婚等により、相続人が海外に居住されていることも多いかと思います。上記4の通り、財産が未分割の場合、必ず準確定申告が必要となりますので、有価証券等を1億円以上保有し、かつ、相続人が海外にいる場合には、遺言等の事前の対策が必要になると考えます。

<執筆者紹介>

坂本 雄一(税理士 TAX部門/個人資産税務に所属)

数多くの相続税申告業務のほか、相続発生前の節税対策、事業承継対策、
税務相談業務など幅広い個人税務のサポートを行っております。