国外転出(相続)時課税の納税猶予制度について
TAX部門 個人資産税務所属 深川 雄
1.国外転出(相続)時課税の納税猶予制度の概要
国外転出(相続)時課税は、相続開始の時点で1億円以上の有価証券等の対象資産を所有等している一定の居住者が亡くなり、国外に居住する相続人がその相続により対象資産を取得した場合は、その相続時に取得した相続対象資産について譲渡等があったものとみなして、相続対象資産の含み益に対して被相続人に所得税が課税される制度です。
2.期限内申告(準確定申告)・担保の提供
上記に該当する場合には、相続人は、相続開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に、相続開始の時の価額で相続対象資産の譲渡等があったものとみなして、その年の各種所得に国外転出(相続)時課税の適用による所得を含めて、被相続人等に係る所得税の準確定申告書の提出及び納税をする必要があります。また、納税猶予の特例の適用を受ける場合は、確定申告期限までに、納税猶予分の所得税額及び利子税額に相当する担保を提供し、かつ、相続対象資産を取得した非居住者である相続人等の全員が、原則として連署による一の書面で納税管理人の届出をする必要があります。なお、納税猶予期間は5年です(期間延長している場合は10年)。
3.適用継続届出書の提出
納税猶予期間中は、相続人は、非居住者である相続人等が各年12月31日において所有等している適用相続資産について、適用相続資産の種類、名称、銘柄別の数量などを記載した「継続適用届出書」を所轄税務署に提出する必要があります。
4.国外転出時課税制度の納付についてのフローチャート
国外転出時課税制度の納付についてパターン別に分けると下記の通りになります。帰国した場合や適用相続資産の価額が下落した場合は、更正の請求が可能となります。
国税庁ホームページ(国外転出時課税制度のあらまし):筆者一部加工
<執筆者紹介>
深川 雄 (TAX部門/個人資産税務に所属)
個人資産税部門に所属し、相続税申告のほか、相続対策や事業承継など、資産税業務に従事しています。