平成30年3月 第2号
平成30年4月1日から導入‼フェア・ディスクロージャー・ルールのポイント
シニアパートナー 公認会計士 税理士 真鍋 朝彦
この4月1日より、投資家に対する公平な情報開示を求める新たな規制「フェア・ディスクロージャー・ルール(以下:FDルール)」が適用されます。本稿ではFDルールについてこれまでの情報開示との違いにも触れながらご説明致します。
1.導入の背景
これまでも、上場会社等について、金融商品取引法(以下:金商法)では臨時報告書制度が、また証券取引所では適時開示制度がそれぞれ規定されており、上場会社等はそれらのルールに基づいて情報開示を行ってきました。しかしながら、近年、証券会社のアナリスト等が上場会社から上場会社の業務・財産に関する公表されていない重要な情報で顧客の投資判断に影響を及ぼすような情報(「法人関係情報」)を入手し、その顧客へ提供することで、上場会社の株式の売買の勧誘を行い、行政処分を受けた案件が複数発生しました。こうした事象に加え、海外投資家等からも他の主要国で既に導入されているFDルールを整備すべきとの指摘が相次いだ事が導入の背景にあります。
2.FDルールの概要
3.FDルールの重要情報とこれまでの情報開示対象の情報との違い
FDルール及びそのガイドラインでは、重要情報を「未公表の確定的な情報で公表されれば有価証券の価額に重要な影響を及ぼすもの」としていますが、具体的な事例等は明らかにされていません(個別案件毎に検討が必要とされています)。しかしながら、これまでインサイダー情報などの規制がありながらも上記1「導入の背景」で述べた事象が発生したことを鑑みると「重要情報」の方が「インサイダー取引規制」の対象よりもより広いと考えられます。
4.上場会社等が今後必要となる対応
重要情報に該当する場合は、EDINET(法定開示)やHPでの開示などが必要になります。また、上場会社が取引関係者に対して情報を提供した際に、取引関係者(金融機関等)から「重要情報に該当するのではないか?」という指摘を受けることも考えられます。その場合、
①重要情報に該当すると上場会社が同意する場合は速やかに公表する。
②両者対話の結果、重要情報に該当しないとの結論に至った場合には当該情報を公表しない。
③重要情報に該当はするが、公表が適切でないと判断する場合には公表できるようになるまでの間、守秘義務及び有価証券の売買を行わない義務を負ってもらい公表を行わないなどの対応が必要になります。
5.情報開示の重要性
今後、企業に係る情報開示の重要性はますます高まるものと思われます。財務情報及び非財務情報のそれぞれに留意することが必要です。
<執筆者紹介>
真鍋 朝彦 (シニアパートナー 公認会計士 税理士)
数多くの上場会社、中小会社の業務に従事している。税務・会計業務に加え、M&A業務,内部統制制度構築,国際税務業務なども行っている。