平成30年3月 第1号
3月決算法人の平成30年3月期決算の留意点
TAX部門所属 シニア 伊藤 亮太
今回のTSKNEWSでは、平成30年3月期の決算に向けた税務及び会計の主な留意点をご紹介します。
税務
留意点① 申告期限の延長
会計監査人を置いている場合で、かつ、定款等の定めにより各事業年度終了の日の翌日から3か月以内に、決算についての定時総会が招集されない状況にあると認められる場合に受けられます。ただし、決算日後6か月以内が限度です。
留意点② 所得拡大促進税制の見直し
平成29年度税制改正により、所得拡大促進税制の見直しが行われました。これにより適用の可否と税額控除金額に関して、企業の規模に応じたものへと見直しが図られ、大企業は賃上げ率が2%以上でない限り適用できないこととされました。また、中小企業者等は賃上げ率が2%以上の場合に税額控除の上乗せ措置が適用されます。
留意点③ 外形標準課税の拡大に伴う負担変動の軽減措置
外形標準課税適用法人のうち、付加価値割の課税標準が40億円未満の法人について、平成27年4月1日から平成31年3月31日までの間に開始する事業年度において、当該事業年度に係る事業税額が、当該事業年度の所得割、付加価値割、資本割のそれぞれの課税標準に改正前の税率を適用して計算した事業税額を超える場合に一定の控除が受けられます。
留意点④ 中小企業投資促進税制
中小企業者等が平成31年3月31日までに、新品の特定機械装置等を取得して指定事業の用に供した場合、その事業年度において取得価額の30%の特別償却、又は取得価額の7%の税額控除(特定中小企業者等に限る。)が選択適用できます。また、中小企業投資促進税制の上乗せ措置は、平成29年度改正で中小企業経営強化税制に改組されました。
会計
留意点 「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」等の公表
平成30年2月16日にASBJ(企業会計基準委員会)より「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」等が公表されました。本会計基準の適用時期は、平成30年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用されます。ただし、表示及び注記事項の取扱いに関しては、平成30年3月31日以後最初に終了する事業年度から適用することができます。本会計基準における主な改正内容は以下の通りです。
個別財務諸表における子会社株式等に係る将来加算一時差異の取扱い
従来は、個別財務諸表における子会社株式等に係る将来加算一時差異について、一律、繰延税金負債を計上することとされていた。これを連 結財務諸表の取扱いに合わせ、親会社又は投資会社がその投資の売却等を当該会社自身が決めることができ、かつ、予測可能な将来の期間に、その売却等を行う意思がない場合を除き、繰延税金負債を計上する取扱いへ改正されております。
(分類1)に該当する企業における繰延税金資産の回収可能性に関する取扱い
「繰延税金資産の回収可能性に関する摘要指針」第18項につき、「(分類1)に該当する企業は、原則として、繰延税金資産の全額について回収可能性があるものとする。」と「原則として」が追加されております。これは、例えば、完全支配関係にある国内の子会社株式の評価損について、企業が当該子会社を清算するまで当該子会社株式を保有し続ける方針がある場合等、将来において税務上の損金に算入される可能性が低いときに、当該子会社株式の評価損に係る繰延税金資産の回収可能性はないと判断することが適切との考えを明確にするものです。
表示
本会計基準において、繰延税金資産は「投資その他の資産」の区分に表示し、繰延税金負債は「固定負債」の区分に表示することとされ、従来の関連する資産・負債の分類に基づく区分表示は不要となりました。
注記事項
注記事項には、①評価性引当額の内訳に関する情報、②税務上の繰越欠損金に関する情報が追加されております。
<執筆者紹介>
TAX部門/シニア 伊藤 亮太
上場企業の関係会社及び中小企業を中心に決算業務、申告書の作成、税務相談業務に従事。
Column
コインチェックの「NEM」流出問題や「ビットコイン」価格の乱高下など、最近何かとニュースを騒がせている仮想通貨ですが、会計分野でもトピックがありました。仮想通貨による資金調達として注目を集めているICO(Initial Public Offering)等の会計処理をめぐり監査法人と協議をしていたメタップスが、2/14に四半期報告書を提出しましたが、監査法人のレビュー報告書における記載内容など、先行事例として興味深いものとなりました。また、企業会計基準委員会からは、昨年末に「資金決済法における仮想通貨の会計処理に関する当面の取扱い(案)」が公開草案として公表されています。詳細については、いずれTSKニュース等でご紹介したいと思います。