平成30年12月 第3号
コンサルティングという観点からの『事業承継』とは?③
公認会計士 田中 新也
コンサルティングという観点からみた「事業承継」と題した3回目として、事業承継対策における具体的な検討事項について解説させて頂きます。なお、次回以降は事業承継においてコンサルティングが活躍する場面を、会社のタイプ別に(健全性の高低、後継者の有無の観点からの分類)ご紹介いたします。
【承継対策はヒト、モノ、カネの視点で総合的な検討が必要!】
事業承継対策という言葉はよく耳にするものの、具体的に何を対策・検討すればいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。事業承継対策には、大きく分けて人的対策(ヒト)と物的対策(モノ・カネ)と呼ばれる2本の柱があります。どちらかに偏った対策では満足いく事業承継が達成されず、事業承継成功のためには2本の柱のバランスが非常に重要となってきます。
【人的対策(ヒト)とは?】
人的対策で第一に重要となるのが、後継者の選出・育成です。オーナー型企業の場合、現経営者のカリスマ性に依存している場合が多々あります。偉大な経営者の威厳とオーラに、従業員ばかりか社外の関係者(取引先、金融機関等)も圧倒され、支持されている場合には、後継者への経営権の承継時期の見極めも重要となるでしょう。また、事業承継においては、親族間でのトラブル(財産承継をめぐっての「争族」)もつきものです。親族や、関係者が納得できる承継を実現することも、人的対策における欠かせないポイントとなります。
【物的対策(モノ・カネ)とは?】
物的対策における代表的な「モノ」として、自社株が挙げられます。自社株を後継者に承継するにあたり、相続税・贈与税の問題は避けられず、自社株の評価額の引き下げや、納税資金の確保等が事業承継対策のメインテーマと言えます。しかし、自社株の評価額引き下げを目的に対策を講じた結果、会社の財務状況や収益力が低下してしまっては、本末転倒です。税務面の対策ももちろん重要ですが、中長期的な観点から言えば、会社の事業に磨きをかけ、健全な財務体質で後継者へ引き継ぐことも重要なポイントと言えます。
税務的な観点に限らず、様々なタイプの会社へコンサルティング業務を提供させて頂いている我々の経験やノウハウが、人的対策・物的対策の両局面からお手伝いできる場面も多いと思いますので、お悩みの際には是非弊事務所へご相談ください。
<執筆者紹介>
田中 新也 FAS部門所属 マネージャー 公認会計士
大手監査法人で金融機関(銀行、証券会社、ファンド等)に対する監査業務に従事した後、高野総合会計事務所に入所。現在は、FAS部門にて企業再生(私的整理案件を中心に、民事再生業務も複数件担当)、M&A等のデューデリジェンス業務、バリュエーション業務等に従事。また、クライアントや金融機関向けに、管理会計・再生業務の研修も実施。