令和元年5月 第1号
3月決算法人の2020年3月期第1四半期決算の留意点
TAX部門 五十嵐 拓也
今回のTSKニュースでは、3月決算法人の2020年3月期第1四半期決算に向けて、税務の留意すべき点をご紹介いたします。
留意点① 業績連動給与の手続き要件の見直し
コーポレートガバナンス・コードの改定を契機とし、役員給与における業績連動給与の手続きに係る要件について、次の見直しが行われました。
① 報酬委員会等における決定等の手続きについて、次の見直しを行う。
(イ) 「業務執行役員が報酬委員会等の委員でない」という要件を除外する。
(ロ) 「業務執行役員が自己の業績連動給与の決定等に係る決議に参加していない」という要件を加える。
(ハ) 「報酬委員会等の委員の過半数が独立社外役員である」及び「独立社外役員の全てが業績連動給与の決定に参加している」という要件を加える。
② 「監査役会設置会社における監査役の過半数が適正書面を提出した場合」及び「監査等委員会設置会社における監査等委員の過半数が賛成している場合」の取締役会の決定の手続を除外する。
留意点② 研究開発税制の見直し(大企業向け)
我が国の国際競争力を支える民間研究開発の維持・拡大を図るため、イノベーションに繋がる中長期・革新的な民間研究開発投資を増加させるため、総額型の控除限度引上げ等を行うこととなりました。
① 総額型(中小企業技術基盤強化税制を含む)
いわゆる高水準型の廃止(総額型への統合)に伴い、試験研究費割合が10%超の場合には、税額控除率に一定割合の上乗せが認められることになりました(2年間の時限措置)。また、一定のベンチャー企業の控除上限額については法人税額の40%(現行25%)に引き上げられます。なお、一定のベンチャー企業とは、設立後10年以内の法人のうち当期において翌期繰越欠損金額を有するものをいいます。
② オープンイノベーション型(OI型)
特別試験研究費の対象となる試験研究の範囲に、企業間における一定の要件を満たす委託研究が追加されるほか、研究開発型ベンチャー企業との共同研究や一定の要件を満たす委託研究に係る税額控除率が25%となります。
また、控除上限額が法人税額の10%(現行5%)に引き上げられます。特別試験研究費の対象となる試験研究の範囲に、特定用途医薬品等に関する試験研究等が追加されます。
留意点③ みなし大企業の範囲の見直し
中小企業向け優遇税制を受けられない「みなし大企業」の判定における大規模法人の範囲が、現行の「資本金1億円超の法人又は資本のない法人のうち常時使用する従業員数1,000人超の法人」に加え、「100%グループ内の大法人(資本金の額若しくは出資金の額が5億円以上である法人、相互会社若しくは外国相互会社(常時使用従業員数が1,000人超のものに限る。)又は受託法人)に発行済株式の全部を直接・間接に保有されている法人」も、大規模法人とみなされることとなり、結果として優遇税制を受けられる「中小企業者」の範囲が縮小されることとなりました。
留意点④ 中小企業向け税制の「適用除外事業者」
中小事業者等に該当していた場合でも「適用除外事業者」に該当した場合には、所得拡大促進税制の中小企業特例等の中小企業者向け税制の適用を受けることが出来なくなります。適用除外事業者とは、次の算式により計算した所得の金額の年平均額(調整事由がある場合の調整を加えた金額により計算した金額)が15億円を超える法人をいいます。
基準年度(注1)の所得の金額の合計額/各基準年度の月数(注2)の合計数×12
(注1)基準年度とは、事業年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度をいう。
(注2)月数は、暦に従って計算し、1月に満たない端数を生じたときは、これを1月とする。
Column
新しい時代を迎えました。新しい元号「令和」とは、「万葉集」からの言葉とされており、新元号発表時の説明によれば「春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように、一人ひとりが明日への希望と共にそれぞれの花を大きく咲かせることが出来る」という意味を持っているとのことでした。「平成」時代はバブル崩壊後の「失われた20年」などと景気の後退局面の期間が長い時代でした。 新たな時代を迎え一人ひとりが希望を持てるような時代を皆様と共に迎えられればと思います。今年は10月に消費税増税が予定されており不透明な点もありますが、お客様へのタイムリーな情報提供と、適切なアドバイスにより少しでもお役に立てるように、職員一同精進して参ります。
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