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令和元年5月 第2号

~結婚・子育て資金の一括贈与の贈与税非課税措置~

個人資産税部門 阿久津貴典

2019年度税制改正大綱において贈与税の非課税措置の見直しが行われました。先月の第2号では教育資金一括贈与の贈与税非課税措置の見直しについてご説明しましたが、今月は結婚・子育て資金一括贈与の贈与税非課税措置についてご説明します。なお、この改正は2019年4月1日に施行されております。

1.制度の概要

(1)贈与税の非課税
 結婚・子育て資金を一括で贈与した場合には、基礎控除額の110万円を超えるものは贈与税が課税されるのが原則となりますが、信託銀行等と結婚・子育て資金管理契約を締結して、20歳以上50歳未満の直系卑属(子・孫等)に結婚・子育て資金を一括贈与した場合には、1,000万円まで贈与税が非課税とされます(2021年3月31日までの贈与に限ります) 。なお、結婚・子育て資金を直系血族に必要な都度、必要な額だけ贈与する場合(社会通念上相当の範囲に限ります)には、本制度の適用を待つまでもなく非課税とされますので、一括での贈与という点がポイントとなります。
 
(2)使い残しについての相続税、贈与税の課税
 贈与者が死亡した場合には、その死亡した日の結婚子育て資金の使い残しは、受贈者の相続財産とみなされ、相続税の課税対象とされます。 また、結婚・子育て資金管理契約終了(受贈者が50歳に達したこと等)時点において、使い残し(相続税の課対象とされた金額を除く)がある場合には、その使い残しについて受贈者に贈与税が課税されます。 なお、結婚費用については300万円を限度としており、結婚費用のうち300万円を超える部分の金額については、使い残しとして相続税又は贈与税が課税されます。
 

2.留意点

例えば、孫が5人いたとした場合、結婚・子育て資金として孫にそれぞれ1,000万円を一括贈与すれば1000万円×5人=5,000万円の相続財産を圧縮することが可能となりますので、本制度は相続税の節税方法として有効です。
 教育資金非課税措置との違いとしては、贈与者が亡くなった時点で使い残しがあれば、その使い残しは例外なく相続財産に含まれる点です(注)。そのため、使い残しが生じないよう計画的な贈与が必要となります。なお、使い残しが贈与者の相続財産に含まれた場合には、その後、受贈者が50歳となり、結婚・子育て資金管理契約終了時に使い残しがあったとしても、贈与税は課税されないこととなります。
(注)教育資金非課税措置についても、今回改正により、贈与者が亡くなった時点の使い残しは、一定の条件を満たす場合相続財産とされることとなりましたが、詳細につきましては先月の第2号をご覧ください。

3.改正内容:所得制限の新設

贈与の年の前年の受贈者の合計所得金額1,000万円を超える場合には本制度の適用を受けることができないこととされました。
 これは、本制度の趣旨が、高齢者世代から次世代へ資金を移転して消費を活発化し、景気拡大を図るものであるところ、本制度が富裕層の相続税節税対策に利用されている実態があることから、受贈者が高額所得者である場合に利用制限を設けたことによります。
 なお、子・孫に結婚・子育て資金を贈与するに当たり、子・孫の合計所得金額が1,000万円を超えているケースはまれであると考えられ、本制度は改正後においても引き続き相続税節税対策として有効であると考えられます。

<執筆者紹介>

個人資産税部門 阿久津貴典

相続税申告のほか、相続対策や事業承継など、個人資産税業務に従事しています。