令和元年6月第2号
~民法改正 特別寄与料の請求権の創設~
個人資産税部門 古賀友理
令和元年7月1日より平成30年度民法改正で新たに設けられた「特別寄与料」を請求できる規定が施行されます。これまでも相続人間の公平を図るため寄与分として請求することはできましたが、相続人のみ認められていた権利でした。高齢化社会を背景に当改正により対象者の範囲が拡充され、より実質的公平性が高まりました。
1.制度概要
「寄与」するとは、社会や人のために役立つこと、貢献することです。被相続人の療養看護等により被相続人の財産の維持・増加に貢献(特別の寄与)した者に対しては、遺産分割においてその貢献を寄与分として相続分に上乗せできる制度です。
しかし、現行法では、寄与分は基本的に”相続人“のみが対象であり、子の配偶者などの相続人でない者の貢献分を主張するこはできませんでした。このような不平等を解消するために改正され、一定の要件(下記2)のもとで、被相続人の相続人でない親族(特別寄与者)でも金銭の支払い(特別寄与料)を請求できることなりました。
2.特別寄与の要件
以下の要件を全て満たす場合、特別寄与料を請求することができます。
①被相続人の相続人以外の親族であること
親族とは6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族をいいます。
②被相続人に対して無償で療養看護その他の労務提供し、
その結果、財産の維持または増加をさせること
注:現行の寄与分制度で認められる「被相続人の事業に関する財産 上の給付」は対象となりません。
③特別の寄与であること
通常期待されるような程度を超える貢献が必要と考えられます。
3.税務上の取り扱い
(1)特別寄与者
特別寄与料相当額を被相続人から遺贈により取得したものとみなして相続税の課税対象となります。(遺贈とみなすため相続税2割加算の対象となります。)特別寄与料の額が確定し、新たに相続税の納税義務が生じた特別寄与者は、その事由が生じたことを知った日から10ヶ月以内に相続税の申告書を提出する必要があります。
(2)特別寄与料を支払う相続人
支払うべき特別寄与料の額を各相続人の課税価格から控除できます。また相続税の申告期限までに特別寄与料の額が確定しない場合には、その確定後4か月以内に限り更正の請求をすることができます。
4.まとめ
寄与分や特別寄与の金額や割合は原則として請求者と相続人との協議にて決定されますが、協議で定められない場合は相続の開始及び相続人を知った時から6ヶ月以内または相続開始の時から1年以内限り、家庭裁判所に審判の申し立てを行うことができます。とはいえ、本制度は現状認められないケースも少なくありません。そのような場合に備えてお世話をしてくれた方等へ財産を遺したい場合は、意思能力があるうちに生前贈与や遺言書に明記するなどの手段をとっておくことも重要であると考えられます。
<執筆者紹介>
個人資産税部門 古賀友理
相続税申告のほか、相続対策や事業承継など、個人資産税業務に従事しています。