令和元年7月 第3号
事業分析の手法 ~SWOT分析とクロスSWOT分析~
FAS部門 濱中 亮
今回からは事業分析をテーマに様々な手法についてご紹介していきます。第一回の今回はSWOT分析とクロスSWOT分析についてご紹介いたします。
●SWOT分析
SWOT分析は事業の内部環境と外部環境それぞれのプラス要因とマイナス要因を整理することで、市場機会や事業課題を発見し、事業の今後の戦略や計画を練る上での基礎とするための分析です。内部環境のプラス要因とマイナス要因は自社の「強み(Strength)と「弱み」(Weakness)、外部環境はそれぞれ「機会」(Opportunity)と「脅威」(Threat)からなり、4要素の英語の頭文字を取っSWOT分析と呼ばれています。
SWOT分析では、自社の「強み」や「弱み」は外部環境によって変動してしまう側面があるため、まず外部環境にあたる「機会」と「脅威」の分析から行います。 外部環境の要素としては政治、経済の状況や法規制、また競合他社の存在や市場の成長性などがあります。これらの外部環境について自社にとって「機会」若しくは「脅威」となる要素を整理します。
外部環境の分析が出来たら次に内部環境に移ります。外部環境で整理した情報と自社の状況を合わせて、自社の「強み」と「弱み」を整理します。内部環境には技術力やチャネル、ブランドイメージなどがあります。
●クロスSWOT分析
SWOT分析で外部環境、内部環境の分析が出来たら、次にSWOT分析で得た情報を基にどのような戦略・方向性に進むべきかの判断をする必要があり、そこで行う分析がクロスSWOT分析です。クロスSWOT分析ではSWOT分析で整理した「強み」「弱み」「機会」「脅威」の4要素を掛け合わせて、事業の方向性や戦略の検討を行います。
①「機会」 × 「強み」 ⇒ 積極戦略
自社の強みを活かして機会を最大限に活用することで、事業をより積極化する戦略を検討します。
②「脅威」 × 「強み」 ⇒ 差別化戦略
自社の強みを活かして脅威を克服する戦略を検討します。強みを活かすことによって競合との差別化を図る戦略です。
③「機会」 × 「弱み」 ⇒ 改善戦略
機会を活かすために自社の弱みを克服するための戦略を検討します。
④「脅威」 × 「弱み」 ⇒ 回避戦略
外部環境の脅威と自社の弱みがもたらす最悪のケースを想定して、それを回避するための戦略を検討します。場合によっては事業の縮小や撤退なども検討の対象となります。
<執筆者紹介>
FAS部門 濵中 亮
メーカーでの営業業務を経て髙野総合会計事務所に入所。現在は中小企業の事業再生業務やM&Aなどのデューデリジェンス業務に従事しています。