令和2年3月 第3号
令和2年(2020年)3月期決算留意事項①
公認会計士 藤田 祐紀
令和2年(2020年)3月期の決算において関連する主な会計基準やその他規則等の改正の概要をご説明します。
会計基準等の改正
実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」及び 実務対応報告第24号「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い」の改正
適用時期:原則:2020年3月期(遅延適用可)
実務対応報告第18号及び第24号は、在外子会社や関連会社の財務諸表が国際会計基準(IFRS)や米国会計基準に準拠して作成されいる場合に、連結決算手続上会計処理を修正しなければいけない項目を示しているものです。
2020年3月期決算においては、2018年に改正された『資本性金融商品の公正価値の事後的な変動をその他の包括利益に表示する選択をしている場合の組替調整』を適用することが原則とされています。
ただし、実務上の負担を考慮し2021年3月期決算からの遅延適用も認められています。
企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」 及び 企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」の改正
適用時期:2020年3月期
2020年3月期の期首以後に実施された組織再編から下記の改正項目が適用となっています。
・条件付取得対価の定義
・対価が返還される条件付取得対価の会計処理
・結合分離適用指針の記載内容の改正
なお、これまでの会計処理と異なることとなる場合には、
・会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取扱う
・改正会計基準等の適用前に実施された企業結合及び事業分離等の会計処理に係る従前の取扱いは適用後においても継続し、会計処理の見直し及び遡及的な処理は行わないこととされています。
その他規則・税制改正関連等
企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令
適用時期:2019年3月期~
「記述情報の開示に関する原則」及び「記述情報の開示の好事例集」
適用時期:2020年3月期
2018年6月に金融審議会の「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告において『財務情報及び記述情報(非財務情報)の開示は、投資家による適切な投資判断を可能とし、投資家と企業の建設的な対話を促進することにより、企業の経営の質を高め、企業が持続的に企業価値を向上させる観点から重要』と提言された事を受け、有価証券報告書の記載事項の変更や、開示の考え方や望ましい開示の内容や取組み方をまとめたものが公表されています。
これらは、2019年3月期の有価証券報告書より順次適用することとなっており、次回以降詳細に解説いたします。
税制改正に伴う、法定実効税率算定の為の税率の変更
適用時期:2020年3月期
2019年度税制改正において、事業税に関する改正が行われたことから、税効果会計適用時の法定実効税率の算定にあたり、当改正の内容を考慮する必要があります。
<執筆者紹介>
藤田 祐紀 シニアスタッフ 公認会計士
大手監査法人で国内監査業務に従事した後、髙野総合会計事務所に入所。中小企業再生支援協議会への出向で、企業再生局面での金融機関の調整現場も経験。現在はFAS部門にて企業再生、M&A等のデューデリジェンス業務等に従事。