令和2年8月第3号
中小企業が取るべきコロナ環境下の対策③
FAS部門 中村 太樹
今回は「中小企業が取るべきコロナ環境下の対策」の第3回として、①コロナ環境下でのM&Aによる成長戦略 ②コロナ環境下での事業承継について解説致します。第1回、第2回ではコロナ環境下の中で、自社の資金・費用構造を見直し等、自社を見直す対応を解説しましたが、現在、「第2波」とも言うべき状況で、経済活動の影響も中長期的に及ぼすものと予測されております。そういった中で経営戦略として新規のビジネスモデルの創出や後継者への事業承継などの決断を迫られる可能性もあるため、事前に検討をおこなっておくことが重要となります。
①コロナ環境下でのM&Aによる成長戦略
新型コロナウイルス感染症が発生して以来、日常生活・経済活動等が大きく変わっており、中長期的にコロナが収束した場合においても、新しい生活様式に対応したビジネスモデルへの転換が必要となってきます。既存のビジネスモデルをすぐに変更することは容易でないため、M&Aなどの手段を活用することにより、事業領域を広げ、シナジー効果から新規のビジネスモデルを創出していくことが考えられます。
また、M&A市場はコロナの影響により資金繰りの困窮、事業継続に対するモチベーションの低下、後継者不足や人材不足等の諸問題がより顕著になってきており、決断を迫られる売り手企業は増加していくものと見込まれております。一方で買い手企業にとっては平常時と比較して売り手企業の業績悪化や早期売却ニーズなどの事情により、結果的に割安な買収価格に抑えられる可能性があることから、新たな付加価値を生み出せる企業の発掘、事前に検討をおこなっておくことが重要となります。
②コロナ環境下での事業承継
親族等に事業承継を検討している場合、税務的な視点から承継する上で財産価値が低く、自社の株価も低いほど、承継しやすいという状況になります。自社株式を算定するうえで株式取得者が同族株主の場合は、会社の規模に応じて複数の評価方法があります。
その中で類似業種比準方式は自社と業種が類似する上場企業の株価を参考にするためコロナ環境下の中で上場企業の業績悪化や市場での株価の下落という状況は、財産権の移転等、事業承継をおこなう絶好のタイミングに当てはまると言えます。
実際の算定時には一株当たりの配当金額など他の要素を考慮するケースもありますが、右表の通り同業種比較では、
コロナの影響が出始めた4月時点において株価は減少傾向で、「第2波」とも言うべき状況が継続すると株価が大きく変動する可能性があることから、承継しやすい環境にあると考えられますので、
事前シミュレーションをおこなっておき、現状を把握しておくことが重要となります。
弊事務所は数多くM&A、事業承継のサポート経験がございます。今後の経営についてお困り事などがございましたらぜひご相談ください。
<執筆者紹介>
FAS部門 中村 太樹
一般事業会社で経理業務・建設コンサルタント会社でコンサル業務を経て髙野総合会計事務所に入所。現在は中小企業の事業再生業務やM&Aなどのデューデリジェンス業務に従事しています。