~年末調整および法定調書の留意点~
TAX部門 湯田 孝範
1.年末調整の留意点
①給与所得控除の見直し
給与所得控除に以下の改正が入っております。
〇給与所得控除の一律10万円の引き下げ。
〇給与の収入金額850万円超の所得控除の上限が195万円。
②基礎控除の見直し
給与所得控除の見直しと併せて以下の改正が入っております。
〇 38万円⇒48万円 10万円の引き上げ。
〇 合計所得金額が2,400万円を超える個人は以下となり、2,500万円を超えると基礎控除の適用がなくなります。
合計所得金額2,400万円以下・・・・・・48万円
2,400万円を超え2,450万円以下・・・・32万円
2,450万円を超え2,500万円以下・・・・16万円
③所得金額調整控除の創設
給与収入が850万円を超える場合でも、年齢23歳未満の扶養親族を有する人、特別障害者、又は特別障害者の同一生計者や扶養親族を有する人は、給与の収入金額(その給与の収入金額が1,000万円超の場合は1,000万円)から850万円を控除した 金額の10%に相当する金額を給与所得から控除することとされました。
④「給与所得者の基礎控除申告書」、「所得金額調整控除申告書」の新設
上記②、③の改正に伴い「給与所得者の基礎控除申告書」、「所得金額調整控除申告書」が設けられ、それぞれ適用を受けようとする者は、その年最後に給与の支払を受ける日の前日までにそれぞれの書類を給与の支払者に提出しなければならないこととされました。
⑤ひとり親控除及び寡婦(寡夫)控除に関する改正
ひとり親に該当する場合は、ひとり親控除として35万円をその年分の所得から控除することとされました。ひとり親とは現に婚姻をしていない人、配偶者の生死の明らかでない人のうち以下に該当する人です。
イ 生計を一にする子がいること。
ロ 合計所得金額が500万円以下であること。
ハ その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる人がいないこと。
また、寡婦(寡夫)控除の要件の見直しが行われ、要件に上記ひとり親控除のイ、ロと同様の要件が追加されました。さらに「特別の寡婦」に該当する場合の寡婦控除の特例は廃止されました。
⑥年末調整の電子化について
令和2年10月から、従業員が給与の支払者に年末調整書類を電子データで提出することも可能となったため、年末調整手続の電子化が大きく推進されることとなります。税務署への届出のうえ承認も必要となりますが、今後ますます電子化の傾向は進んで行くことなります。
2.法定調書の留意点
法定調書の種類ごとに、前々年の提出すべきであった当該法定調書の枚数が100枚以上(旧:1,000枚以上)である法定調書については、令和3年1月1日以降、e-tax又は光ディスク等による提出が必要となります。従来よりその年分の法定調書を書面で提出されていた場合には、一定の形式での電子データでの手続きが必要となります。また、e-tax等で提出する必要がある場合には、市町村への給与支払報告書もeltax又は光ディスクでの提出が義務化されておりますので、併せてご確認お願い致します。
<執筆者紹介>
TAX部門 湯田 孝範
大企業、大企業の関係会社や中小企業、公益法人等の決算業務、申告書の作成、税務相談業務に従事。
Column
菅内閣が9月16日に発足しましたが、甘利税制調査会長は続投となりました。
新聞報道等に依れば、新型コロナウイルスの感染拡大で影響を受けた企業に対して新たに税制面での支援が想定されていることに加え、エコカー減税の延長、商業地における固定資産税の負担抑制、デジタル化推進に向けた企業への税制優遇も検討されているとのことです。また、経済対策としての消費税の減税には改めて否定的な見解が示されております。例年、12月には「税制改正大綱」が公表される予定です。大綱公表後には主要な改正項目を速報するともに「税制改正大綱解説セミナー」を開催致します。詳細は改めてお知らせいたします。是非ご参加下さい。