収益認識基準適用まであと少し!~①直前チェックポイント~
公認会計士 田中 新也
①関係部署への啓蒙・協議
収益認識基準の適用により、売上高の「計上額」や「計上時期」が従来とは大きく変わる可能性があります。そのため、経理部門に限らず、例えば、売上高を管理指標とする営業部門においても、収益認識基準の適用により管理目標数値や日々のオペレーションに変更が生じる可能性があります。 コロナ禍により密なコミュニケーションをとることが難しい場合も想定されますが、収益認識基準の円滑な導入を達成するには関係部署への事前の啓蒙・協議は欠かせません。
②グループ全体での影響把握
収益認識基準は会社によって論点や影響額が異なります。そのため、子会社を含めた連結グループ全体において、重要な論点や影響の検討漏れがないか、再度確認することが重要です。例えば、親会社と異なる事業を行う子会社では、収益認識基準適用による論点が親会社と異なる場合が考えられます。また、子会社における影響額が、親会社に比して大きい場合も想定されます。多数の子会社を抱えるグループ、多数の事業を展開するグループにおいては、当該検討プロセスが特に重要と言えるでしょう。
③システムへの影響検討
収益認識基準の適用により影響を受けるのは会計システムだけではありません。収益認識基準の適用は売上高に与える影響が大きいことから、売上高と直結する販売管理システムの見直しが必要になる場合もあります。例えば、従前は顧客への請求時に一括で売上を計上していたような取引であっても、契約内容によっては、収益認識基準の適用により売上計上のタイミングがズレるような場合も考えられます。販売管理システムに限らず、収益認識基準の適用により見直しが必要となるシステムを網羅的に把握したうえで、見直しの程度を検討することが重要です。また、システムの変更だけではなく、販売契約書の記載方法について、収益認識基準に適応した内容へ変更する必要が出てくる場合もある点にも留意が必要です。
④税務への影響検討
収益認識基準の公表を受けて、平成30年度税制改正により法人税における収益認識についても改正が行われました。返品や貸倒の処理等の一部の例外を除いては、基本的には収益認識基準の考え方と整合的な改正となっています。一方、消費税については収益認識基準に合わせた改正はなされておらず、従前と同様の取り扱いとなります。そのため、会計上の収益額と、消費税法上の資産譲渡等の対価の額に乖離が生じるケースが想定されます。消費税の計算においては、当該乖離に対する手当が必要となるため、該当する取引の特定、具体的な集計方法を検討しておく必要があります。
<執筆者紹介>
FAS部門 マネジャー(公認会計士) 田中 新也
大手監査法人で金融機関に対する監査業務に従事した後、髙野総合会計事務所に入所。現在は、企業再生、M&A等のデューデリジェンス業務、バリュエーション業務等に従事。また、クライアントや金融機関向けに、管理会計・再生業務の研修も実施。