収益認識基準適用まであと少し!~③開示事例~
FAS部門 シニアマネジャー 公認会計士 髙木 融
①早期適用会社の開示確認
収益認識基準は2021年4月以降開始する事業年度から強制適用となりますが、早期適用が認められており、既に70社超の上場会社が早期適用をしています。収益認識基準では、早期適用した旨や影響額等のほか、適用による主な変更点が注記として開示されており、特に自社と類似する同業他社の早期適用事例の開示情報は、重要な論点漏れの防止や影響度合いを再確認する観点からも重要度が高いと思われます。
②具体的な開示例
進行年度である2021年3月期においても新たに収益認識基準を早期適用している上場会社が20社超出てきており、ここにきてさらに多くの早期適用会社の開示事例が確認できる状況になっています。例えば、スーパーマーケット事業を営む㈱ヤオコーでは第1四半期開示において下記のような注記を行っています。
1 代理人取引に係る収益認識
消化仕入に係る収益について,従来は,顧客から受け取る対価の総額で収益を認識しておりましたが,顧客への財又はサービスの提供における役割(本人又は代理人)を判断した結果,総額から仕入先に対する支払額を差し引いた純額で収益を認識する方法に変更しております。なお,当該収益を営業収入に計上しております。
2 自社ポイント制度に係る収益認識
当社は,ヤオコーカードによるカスタマー・ロイヤルティ・プログラムを提供しており,会員の購入金額に応じてポイントを付与し,500ポイントごとに500円分のお買物券を発行しております。従来は,付与したポイントの利用に備えるため,将来利用されると見込まれる額をポイント引当金として計上し,ポイント引当金繰入額を売上高から控除しておりましたが,付与したポイントを履行義務として識別し,将来の失効見込み等を考慮して算定された独立販売価格を基礎として取引価格の配分を行う方法に変更しております。
3 商品券に係る収益認識
当社が発行している商品券の未使用分について,従来は,一定期間経過後に収益に計上するとともに,将来の使用に備えるため,商品券回収損引当金を計上しておりましたが,顧客が権利を行使する可能性が極めて低くなった時に収益を認識する方法に変更しております。なお,当該収益は,従来の営業外収益に計上する方法から営業収入に計上する方法に変更しております。
~中略~ この結果、当第1四半期連結累計期間の売上高が1,504百万円減少、売上原価が1,219百万円減少、営業収入が279百万円増加、営業利益が5百万円減少、営業外収益が6百万円減少、営業外費用が4百万円減少、経常利益及び税金等調整前四半期純利益がそれぞれ8百万円減少しております。また、利益剰余金の当期首残高は36百万円減少しております。
(2021年3月期第1四半期報告書より抜粋)
当該開示例では、いわゆる典型論点である代理人取引やポイント制度、商品券に係る項目について実際に会計方針変更が行われているケースの注記例を確認することができます。上記はほんの1例ではありますが、最終段階でより多くの他社開示例を確認し、自社との比較を実施することや今後の開示に向けて参考に資する情報を入手しておくことは有意義であると思われます。
執筆者紹介
FAS部門 シニアマネジャー(公認会計士) 髙木 融
大手監査法人で監査業務に従事した後、高野総合会計事務所に入所。現在は、企業再生、M&A等のデューデリジェンス業務、バリュエーション業務等に従事。