令和3事務年度分の税務調査の動向
個人資産部門 税理士 シニア 加藤 剛司
1. 所得税の調査等の状況
【所得税】(東京国税局HP「令和3事務年度 所得税及び消費税税務調査等の状況」を基に作成)
・特別調査・一般調査は、高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を対象に深度ある調査を行うものです。
・着眼調査は、申告内容の分析等の結果、申告漏れが見込まれる場合に短期間で行う実地調査です。
・簡易な接触は、納税者宅等に臨場することなく、文書、電話等により申告内容を是正するものです。
3. 税務調査等の動向
所得税及び相続税ともに、新型コロナウイルス感染症の影響により大幅に減少した令和2事務年度と比較して税務調査の件数は増えており、令和4事務年度においても同様の傾向になることが予想されます。所得税の調査においては、 「富裕層」、「海外投資等を行っている個人」、「インターネット取引を行っている個人(シェアリングエコノミー、暗号資産等)」、「無申告者」に対して、相続税の調査においては、「無申告事案」、「海外関連事案」、「贈与税」に対する調査及び情報収集等を積極的に進めていくとしています。また、国税庁より公表されている「税務行政DX」では、国税組織内・外の膨大なデータから申告漏れの可能性が高い納税者の特定等を図るとしており、さらに中長期的には AIの活用等によって課税・徴収の効率化・高度化を目指すとしています。税務調査は適正な申告納税制度を担保するためには必要な制度です。一方で多くの納税者にとっては大きな負担になっております。課税当局の税務調査に対する考え方や取り組みを確認しておくことも必要と思われます。
執筆者紹介
個人資産部門 税理士 シニア 加藤 剛司
相続税申告のほか、相続対策や事業承継など、個人資産税業務に従事しています。