電子取引におけるインターネットバンキング取引の取り扱いについて
1.電子取引とは
取引情報の授受について電子データにより行う取引を指します。この「取引情報」とは、取引に関して授受する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書などに通常記載される事項をいいます。
2.電子取引制度下でのインターネットバンキングを利用した取引について
インターネットバンキングによる振込等は、その取引情報の正本が別途紙媒体で送付されるなどといったケースを除き、EDI取引として電子取引に該当するため、金融機関の窓口で振込等を行った場合に受領する書面の記載事項(振込等を実施した取引年月日、金額、振込先名等)が記載された電子データについて、そのデータ又は振込結果等の画面のダウンロードやブラウザの印刷機能を使用しPDF化するなどで電子保存することが必要となります。
3.保存する上での取り扱い、留意点
- オンライン上の通帳や入出金明細等について随時確認可能な状態のものについては、必ずしもオンライン上の通帳や入出金明細等をダウンロードして保存していなくても差支えありません。ただし一定期間が経過することで電子データの確認ができなくなるものについては、その電子データの確認が可能な期限内にダウンロードして保存することが必要となります。
- 1件の振込等のうち振込先が複数ある場合については、各振込先、振込金額を確認することができる書類等の保存が必要となります。
4.インターネットバンキングの振込完了通知の画面について
振込依頼の受付完了が単に表示されているだけの画面については、「取引情報」に該当しないため、電子保存の必要はありません。
5.インボイス制度との関連
金融機関の手数料等の取引については、適格簡易請求書と一定の事項が記載された帳簿の保存が原則必要となりますが、取引数が多いなどにより手数料等の適格簡易請求書の保存が困難な場合、通帳や入出金明細等とその金融機関における入出金や振込みの任意の一取引に係る適格簡易請求書の保存でも仕入税額控除を行えます。
その適格簡易請求書の取得、保存については、金融機関が適格請求書発行事業者の登録をやめない前提に、一度のみで差し支えなく、金融機関からの手数料等のお知らせ(インボイスの記載要件を満たしたもの)などの保存を適格簡易請求書の保存に代えることも可能となります。
インターネットバンキングによる振込手数料等について、電子データにより適格簡易請求書が交付される場合は、ダウンロード等での保存が必要となります。ただし、同種の手数料等が繰り返し発生しており、インターネットバンキング上で随時確認できる状態にあるなどの場合には、上記3.の取り扱いと同様に、電子データの適格簡易請求書をダウンロード等で保存しなくとも、仕入税額控除を適用することが可能です。 なお電子データにより交付される適格簡易請求書も、電子データの確認ができなくなる場合には、確認可能な期限内にダウンロードして保存することが必要です。
執筆者紹介
法人部門 スタッフ 内田 拓志
上場企業の関係会社及び中小企業を中心に決算業務、申告書の作成、税務相談業務に従事し、日々の業務に邁進しております。
Column
令和6年度税制改正により、交際費等の損金不算入制度について、損金不算入となる交際費等の範囲から除外される一定の飲食費に係る金額基準が現行の「1人当たり5,000円以下」から「1人当たり1万円以下」に引き上げられます。本改正は事業年度ベースではなく令和6年4月1日以後に支出する飲食費に適用されるため、例えば12月決算法人であっても、期中である令和6年4月1日以後に支出する飲食費から「1万円基準」を適用することができます。金額基準の引き上げは、地方活性化の中心的役割を担う中小企業の経済活動の活性化や、飲食料費に係るデフレマインドを払拭する観点から実施するとされていますので、必要に応じてご活用ください。