中小企業活性化協議会の支援動向
公認会計士・税理士 シニアマネージャー 田中 信宏
1.相談件数の推移
直近3年度の活性化協議会における相談対応件数と支援完了件数の推移をみると、相談件数はコロナ禍の2021年度を超え、過去最高となっています。コロナ期間中の各種資金繰り支援の終了、近年のエネルギー価格高騰や物価上昇、人手不足などの収益及び資金繰り圧迫要因が増えていることで、中小企業の相談件数が高水準となっているものと推測されます。
2.支援完了件数の推移
また、支援完了件数の内訳をみてみると、再チャレンジ支援※の件数が増加傾向になっています。これは、コロナ禍特例リスケ後の出口支援の強化を趣旨として、事業棄損が大きくなる前の事業清算移行を進めていることが背景にあります。そのため、協議会における弁護士採用や、中小企業版GL(中小企業の事業再生等に関するガイドライン)の廃業型私的整理手続きの活用等により協議会における再チャレンジ支援の役割が高まっているものと考えられます。再生計画策定完了件数は、再チャレンジ支援への移行も影響しておおむね横ばいとなっており、2023年度の内訳としてはプレ再生案件が687件、再生支援が342件となっており、本格的な再生支援準備段階としてのプレ再生案件が大半を占めています。
(出典:中小企業庁「中小企業活性化協議会の活動状況について」(2021年度~2023年度)に基づき筆者加工)
※再チャレンジ支援とは、収益力の改善や事業再生等が極めて困難な中小企業や、保証債務に悩む経営者・保証人等を対象とし、円滑な廃業や保証債務の整理などを行い、従業員のスムーズな転職、経営者の新たな創業及び就職等を支援するものです。例えば下記のような支援が挙げられます。
(中小企業版GLを活用した私的整理) 破産せずにすみ、取引先等へも迷惑をかけにくい
(法的整理とともに事業譲渡を活用) 事業や雇用を一部でも残せる可能性
(経営者保証GLを活用した保証債務整) 個人破産なしに保証債務免除の可能性
3.再生計画策定完了件数の業種別、売上規模別内訳
前述の支援完了件数のうち、再生計画策定完了件数の内訳は、直近3年度で大きな変化はなく、業種は製造業及び卸売・小売業が過半数を占め、売上規模は5億円以下がボリュームゾーンとなっています。
上記のほか、金融支援の動向などもありますので別の機会にご紹介させていただきます。
弊事務所は通常の税務顧問業務に加えて、協議会を含めた再生支援業務など幅広いコンサルティング実績も多数ございますので、お困りごとがございましたら是非ご相談ください。
執筆者紹介
公認会計士・税理士 シニアマネージャー 田中 信宏
大手監査法人で国内監査業務に従事した後、事業会社の税務部門に従事。その後、税理士法人高野総合会計事務所に入所。現在はFAS部門にて企業再生、M&Aのデューデリジェンス業務、バリュエーション業務等に従事。